竜と戯る星 第十三話 オマケ
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特別インタビュー

年も明けきってすっかりおとそ気分も抜けてきた今日この頃、
携帯に連絡が入った。
以前よりアポイントを取ってはいたが、なかなかスケジュールが合わず、
持ち越しになっていた人物が、仕事が一段落ついたので暇になったとのこと。
それで、日に日に形が変わり人がごった返す横浜駅西口で待ち合わせているのである。
人にぶつかって睨まれたりしながら、時間にルーズなその人物をイライラしながら待っていると
「おーい」と暢気な声に顔を上げる。
この人物こそ、本日の主役である、森林3氏である。
挨拶もそこそこに我々は地下への階段を下った。
場所は、某有名電器店の地下にある蕎麦屋である。

―――この店にはよく?

森林3「ええ、たまに。」

氏はおもむろに天せいろを注文する。

森林3「ここの天ざる、いや、天せいろは美味しいんですよ。
    僕はこの世界には二種類の天ざるがあると思うんです。」

―――天ざると天せいろの違いとか?

森林3「それも語り始めると長くはなりますが、そうではありません。
    つゆが、そばと天ぷらで別か、兼用か、ってことです。
    ここは別なんです。」

―――別であるべき、と?

森林3「いえ、どっちも好きなんです。二種類あるって認識を持つってことは、
    両方認めていてこそであるべき、と僕は思いますね。」

―――いきなりそんな深い話を…
  ですが、人によっては、同じつゆを使うことに嫌悪感を感じたりすることもあるでしょうね。

森林3「そうかもしれませんが、それ言い出したら、
    じゃあ、温かい天ぷらそばなんてどうなんだって話ですよね。」

―――店によっては別々に出す所もあるかと。

森林3「原理主義的な話は嫌ですが、そもそも、天ぷらそばは、そばに天ぷらを乗っけたら
    美味しかったから生まれたという説もあるわけで、別々にしてる時点で…
    この話はよしましょう。不確定なネタってのはあまり好きじゃないんです。」

―――まあ、元々こんな話を聞きたいわけじゃないですしね。
  一段落ついた仕事って、ゑびす氏の…

森林3「はい。「竜と戯る星」の連載が終了しました。」

―――それはお疲れ様。今作初期からずっとでしたよね。

森林3「そうですね。途中から森林6君とか入ったんで楽になるかと思ったら、
    森林6君は手前に大きな木があるから遠景では使いづらいとかで…」

―――最後の方とかアップシーンでも森林3さんばっかだったじゃないですか。

森林3「クオリティは6君の方が高いんですがね。やっぱり使いどころ難しかったみたいです。」
―――森林3さんはオールマイティーに活躍できる、と。

森林3「や、そんなこと無いですって。多分現場で一番暇そうに見えたんじゃないですか?」

―――「読者としては忙しそうでしたけどね。」

森林3「それって使い回してるって言いたいだけじゃん(笑)」

―――正直言うとね(笑)
   実際どうなんですか? 使い回されるって。

森林3「悪くないことだと思いますよ。実際、森林背景って手間がかかるし、
    使い回しが許される環境ならどんどん使い回した方が、効率だって良くなるし、
    その分色んな方面に手を回せるようになると思うんです。
    まあ、その分クオリティが下がったり、目に見えて同じ背景ばっかなのはどうかと
    思いますけどね。」

―――使い回しに際して色々工夫はなされてたみたいですね。

森林3「そうですね。明度やトーンを変えるのはもちろん、ブラシを加えたり、一部だけぼやかしたり…
    森林火災のシーンでは火の感じを変えるだけで印象変えられるとかゑびすさん言ってましたね。」

―――森林火災のシーン2回やった理由って…

森林3「まあ、作画が楽になるならそれに越したことはないでしょう。」

―――ということにしておきます。
  森林3さんの気持ちとしてはどうなの?

森林3「出番が多いというのは悪くない気分ですね。
    ゑびすさんからも「君は今回の隠れ主人公だ」なんて言われてましたから。
    ノせられてただけだと思いますけどね(笑)」

―――まあ、ノせられてたんでしょうね(笑)
  でも、出番が多いと嫉妬とかされない?

森林3「んー皆の心の中まではわからないけど、雰囲気は良かった現場ですよ。
    皮肉も混ざってるんでしょうけど、こき使われる僕に6君とかは「出番多くて大変ですね」って。
    あ、完全な嫉妬だ、これ。」

―――最近の漫画界では、写真の利用とかについて色々言われたりしてますが…

森林3「さっきも言ったけど、それで作画が楽になってクオリティも維持できるんなら
    やってもいいんじゃないですか?
    大体、写真背景って言うほど楽でもないと思いますし。
    そりゃ描くのだって難しいですが、そもそも描く技術が無ければ、
    写真をうまく作画に溶け込ますことなんてできないでしょう。
    試しに、どこかで風景写真をダウンロードして、それを単純にツールで二値化しただけのやつが
    漫画で使える背景になるかどうかやってみてほしい。
    最近はそういうのも簡単にできるツールあるかもしれないけど、それでも、満足できる出来に
    なるかどうかは疑問ですよ。」

と、話が熱くなってきたところで天せいろが運ばれてきた。
ここの天せいろは海老が二本なのが特徴だ。

森林3「あなたは海老は最初に食べます?最後に食べます?」

―――最初かなあ。あ、一口目はそばだけど。

森林3「僕もそうなんですが、本当のところ、海老で始まり、海老で締めたいんですよね。」

―――じゃあ、最初に海老を半分食べて、最後にもう半分食べればいいんじゃ?

森林3「それじゃあ、満足しないんですよ。ここの天せいろがいいのは、
    最初に海老をがっつり食べられて最後も海老をがっつりいけるってことです。」

―――なるほど、大変欲張りメニューだ。

森林3「そうでしょう。」

そして、おもむろに彼は海老を口に運ぶ。
私も負けじと海老を口に入れた。
ここの天ぷらは衣が主張しないが、丁度いいサクサク感が海老の味を引き立てる。
そして、そばを流し込む。
ここのそばはコシが強めのへぎそばで、そばを噛むのは邪道と言うが、
噛みしめて味わいたくなる。のど越しもいいが、それだけではもったいない。
美味い天ざるは、天ぷらの食材、衣、そして、そばによるハーモニーで、美しい音楽を奏でる。
野菜天を頂く頃には、二人とも無言で、口内のコンサートホールに耳を預けるのであった。
二本目の海老に別れを告げ、最後のそばをスタンディングオベーションで送り出すと、
丁度いいタイミングでアンコールだ。
「そば湯でございます。」

森林3「贅沢を言えば、つゆが兼用なら、そばつゆのなかに天かすが残って、それがいいアクセントに
    なるんですよね。」

―――それが嫌だって人もいるだろうけどね。

好みは千差万別である。
通の中には、つゆが兼用の場合、塩を頼む人もいるという。
だが、こういう楽しみ方だってある。
物事の楽しみ方とは自分で発見するべきなのだということを彼から学びとれた気がする。

そば湯は、非常に優れたスープと言える。濃厚でありながら、さっぱりとし、
様々な成分に満ち、充足感も得られる。
更に、わさびの辛さや、ねぎの薬味感がとても強く感じられ、スパイシーな味が好みな私にとっては
非常に嬉しいものである。
彼もまた同様らしい。

森林3「天ざるって、そばのためになのか、天ぷらのためになのか、はたまた、そば湯のためになのか、
    なんのために食べてるのか時々わからなくなります。」

―――全部、じゃない?

森林3「かもしれませんね(笑)」

―――なんか、今日はほとんど食レポみたいなインタビューになっちゃいましたけど、
  ごちそうさまでした。

森林3「ごちそうさまって、そっち持ちでしょう?」

―――そうですけど、なんかタメになったような。

森林3「ならないような(笑)」

 

 


そばを待ちながら趣味の陶芸について
ろくろを回す動作を交えながら熱く語る
森林3氏。
趣旨にそぐわないためその部分を割愛せざるを
得なかったこと、ご容赦願いたい。
今回インタビューをご覧いただいた皆さんに素敵なプレゼント。
森林3と、森林6を特別にフリー素材として提供させていただきます。
ご自由にダウンロードしてください。
尚、著作権は放棄しておりませんので、ご利用の際はご注意ください。
加工はご自由にしていただいて構いません。

森林3

森林6

こちらはRPGツクール2000用素材としてもご利用いただけます。



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