頂-ただひとり-の編-あみ- 第九話 3
 

掲示板の前に人だかりができている。私達は、人を掻き分けて、掲示板を見た。

「わ! 同じクラスだね!」

能岡さんと私は共に手を取り合って喜んだ。

傍から見たら、小学校の同級生か何かに見えるのかな?

私立の中学校では、多分そういうのが少ないのだろう。同じ様なことをしている人は見かけなかった。

多分、今日、この学年で最初にできた友達が私達なのだ、と思ったら何だか誇らしげな気持ちになった。

教室に向かう渡り廊下、前方に、女性教師らしい人が歩いていた。

グレーのスーツに、薄茶色のストッキング、軽く茶色に染めた髪、大人の女性の雰囲気を感じさせる。

…ん?

「能岡さん、ごめん、ちょっと先に行ってて!」

「うん いいよ」

私の声が聞こえた途端、前を歩く先生の歩みが速まった。

能岡さんが、先生の横を、挨拶しながら通り過ぎ、向こうの校舎の廊下を曲がったのを確認する。

「先生、おはようございます」

後ろから挨拶されれば、振り向かないわけにはいかない。

「おはよう、 入学式がはじまっちゃうから、急いでね」

そういう先生の顔を、マジマジと見させてもらった。うん、やっぱり。

「わかっちゃった…?」

「っていうか、こんな所でなにやってるんですか? 東子さん」

「私、今日から先生やることに…」

「へ? どういうこと? っていうか、そんなこと心にも…」

「まあ、わからない様には努めてたから… 思考の痕跡をなるべく残さない様にね」

「だけど、先生やるのって、資格いるんでしょ?」

「教員免許はあるからね、あ、私は一応、高校の方で教えてるから、学校では会える機会少ないかも」

「へへ、じゃあ、今日はラッキーだ」

「それはそうと、さっきの子は? 早速友達できたの?」

「まあね」

「へー、小学校時代は友達なんてほとんどいなかったのに、変われば変わるもんだ」

「まあね、 あ、そろそろ行かないと。 また、後でね、っていうか本当のとこ、

どういうことなのか、ちゃんと教えてよね!」

「うへぇ…手加減願います、お嬢様… てか、こらーっ! 廊下を走るな!」  

 

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