頂-ただひとり-の編-あみ- 第二話 9
 

「昨日は、お目に掛れず、申し訳ございませんでした。

当家、依り代の、編と申します」

二人の男の顔がもやついた。

まあ、大体何を考えているのかはわかるが、心を読んでみると、

思った通りである。

「私の様な子供が依り代で驚きの様で」

「いえ、滅相も無い。ですが、見たところ…」

「はい、学校に関しては、学業に支障を来さぬことを条件に、場合によっては休学も許可されています」

質問の終わらぬうちに繰り出される私の受け答えに、只ならぬものを感じた二人は、押し黙ってしまった。

「本日の報道を見まして、昨日、私が直接話を聞いていれば、と思いましたが、

何故、全ての情報を下さらなかったのです?」

「実は…」

「まあ、わかりますよ、心の底では、私達のことを信じられないのでしょう」

「…ええ、確かに、信じきることなどできません、こんな不可思議なことなど…」

堂々と言い切られれば、逆に気持ちいい。

「無理に信じろとは申しません。むしろ、お互い、足りない部分を補い合えるならば、素晴らしいことでしょう」

二人はまた押し黙る。まあ、私にとっては殊更珍しいやり取りではない。

顧客の全てが、神依りを本気で信じているわけではないのだ。

正直言って、下手に信じられるよりは、多少疑いの念を持っていてくれた方がやり易い。

神様の言葉は、いつも的を得ているのか得ていないのか、判断に迷う。

解釈如何では、何とでも言えてしまうものなのだ。

それを、当たり障りの無い言葉に直して伝えても、それに何の意味があるのか、私にだってわからない。

そんな言葉を真に受けてくれたって、困る。

「ところで、編さん、昨日の儀式で、何かわかったことは…?」

「…『焦る者達』という言葉に聞き覚えは?」

「焦る者達ですか… わかりませんね。」

質問をしながら、この人達の心も読んでいたのだが、確かに聞き覚えは無いらしい。

「わかりました…では、神依りではない別の方法を試してみましょう。」

「そんな方法がおありで?」

「はい、ところで、ご協力願えますか?」

「ええ、犯人を見つけることができるのならば…」

未だ半信半疑な言葉を尻目に、私は出かける支度を始めた。  

 

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