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頂-ただひとり-の編-あみ- 第20話 2
 

昼休み、実際のところ、この時間に、中庭にいる人は少ない。

お弁当も、談笑も、お昼寝も、教室でできることである。

学校紹介のパンフレットでは、明らかに楽しげな中庭の談笑が写真掲載されていたが、

明らかな演出だったわけだ。

その中庭の中心に、小高い木がある。

そして、その下に、今、私達はいる。

「で、丸子君が大事に思っている人って?」

「…お前だよ…」

「へ? もう一度、大きな声で」

「お前だって言ってるんだ! 俺は、お前が好きなんだ!」

「… ふーん…」

「それだけかよ… 何か、もっと、反応あんだろ?」

「結局、私は、能岡さんの代用品ってわけだ…」

「そんなんじゃねえよ! 本気だ! 気付いたんだよ!

 俺にとって、お前が一番大事なんだ!」

「まあ、能岡さんには文景さんがいるわけだしね」

「だから、そんなんじゃねえって! わかってくれよ!」

「…わかってる… あなたは、何かが手に入らなければ、その代わりがあればいいっていう人じゃない。

 本当だったら、あなたは負けても、勝つまではあきらめないはず」

「そうだ。もし、次やりあう機会があれば、今度は勝ちたいって思っている!

 能岡のことは抜きにしても!

 とにかく、俺は、お前が好きなんだ!」

「ありがとう… 私も… 私もあなたのことが好き」

「…! 待てよ… それ… 本当なのか?」

「本当だよ。 ずっと前から。初めてしゃべったあの時から。

 私自身は気付いてなかったけど、あなたへの気持に気付いてから、

 それはあの時から始まったものだってわかった」

「だけど… お前は、俺と能岡を…」

「…あなたを悲しませたくなかったし、好きな人の幸せをただ純粋に願っていただけ…

 まあ、それで、うまくいかなかったら、私が代用品のポジションに…って魂胆があったことも

 否定はしないよ」

「…代用品だなんて… お前…お前本当に、馬鹿だよ!

 お前は代用品じゃねえ! エースで四番のスター選手だ!

 お前は最高だ! お前みたいな女が身近にいることを忘れてるなんて、

 俺は最高に馬鹿だ! 俺の目は節穴だ! ああ畜生!自分が憎い!

 …ってか、何だって? 俺のことを好きだって?

 馬鹿かよ! こんな男を!? お前に気付かないこのクソったれを!?

 俺は、最高に馬鹿で阿呆で、クソったれのこん畜生で…」

「やめて!」私は、丸子君の胸元に飛びついた。

「宮田…」

「お互い、馬鹿で…それでいいじゃない…

 きっと、みんなそうだよ…馬鹿ばっかじゃん…

 私達だって、馬鹿でいいんだよ、それで…

 だから… 私の好きなあなた自身をそんな言い方しないで…

 そんなところも全部ひっくるめて、あなたが好きなんだから…」

「…本当に…俺でいいのか…?」

「うん… だけど… 私を好きになるってことは…

 そう簡単なことじゃないよ…」

「何だ? 今度は本当にクマでも倒さなきゃ駄目か?」

「もっと… 厳しいよ…」

「…あーもう、何でもいいや。

 何だってやりますよ、こっちは、マオに鍛えられてんだ。

 これで死ねりゃ本望だね」

「じゃあ、一つ、お願い」

「何だ?」

「死なないで…! もし、命に関わる事態になったら、私のことは諦めて…

 もう、私に会わないで… そうなったら、私の方から学校をやめるし、

 あなたに会う様なことも絶対にしない。

 とにかく、あなたの命を最優先に考えて!」

「…」

「お願い… あなたを失いたくないから… せめて、生きていて…」

「もし駄目で、友達に戻れるなんてことは…」

「…」

「わかった… 覚悟はとうに決まってる。で、相手は誰なんだ?」

「鬼神、そして、神様…」

「… ま… まかせとけ… 軽く捻ってやるって」

そう言う丸子君の心はひどく震えていた。

だけど、その言葉に偽りのないことはわかった。

根拠の無い自信こそが、丸子君を動かす力なのだ。

それが、私に足りないものなのだろう。

あまりに、先を見通すことばかりに心を囚われすぎていた。

人の本心にばかり気が向き過ぎて、言葉や、慣習を無視しすぎていた。

条件反射で動く人間を上っ面だけの人間と思いこみ、

表だけを飾る人間の内面の無さを毛嫌いしてきた。

丸子君だって、そういう人間にかなり近いだろう。

だけど、丸子君が、自分自身に発する言葉は、

丸子君の心自体を貫く鋭い槍である。

丸子君は、自分から発せられた全ての言葉に忠実であり、

もし、自分の言葉に従えない事態が起きた時、激しく自分を責め立てる。

はっきり言って、内面なんて、心の作りだす虚飾だ。

自分でもよくわからない深層心理より、見えやすいから、それを内面と言っているにすぎない。

「外見だけじゃなく内面を見て」なんて言うが、内面だって、外見同様、着飾ったものなのだ。

いざ、内面が露見する時に備えて、皆、心の中まで着飾っているのだ。

外見を着飾る人も、内面を大事にする人も、根っこは同じ。人間なんてどれもこれも空っぽなのだ。

その空っぽの内面を、しっかり見据えている人がいる。

内面の何も無さに焦り、傷つき、動揺しながら、それを埋めるために、自分を高めようとしている人がいる。

その中の一人が、丸子君なのだ。

だから、丸子君が好き、というわけではない。

この学校の中庭の賑いが演出だと知ったことと、

私がこの学校が好きかどうかは、全く関係ないのと同様。

ただ一つ、気が付いたら好きだった。そして、それは出会った時から。

真実は、それ以上でもそれ以下でもない。  

 

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