頂-ただひとり-の編-あみ- 第15話 3
 

元日

宮田家では、この日、初詣ではなく、宮田家なりの方法で、神様に謁見する。

つまりあれだ、いつもの儀式だ。

何の用もないのに、神様のとこまで行って、セクハラされてくる。しかもこっちはそんな気分じゃない。

さて、始めましょうか。

元日だからと言って、いつもと特に変わらない儀式。

鳴り物が鳴って、私が舞う。今となっては、特に意識しなくとも、舞の型は崩れない。

いつぞや、見物に来た文化研究家に、舞だけ見せてやったが、

始終、私の身体についての妄想を繰り広げていた。

つまり、客観的に見て、そういう想像を喚起する様な舞なのだろう。ただクルクル回っているだけなのだが。

で、いつもの領域に到達する。

ここんとこ、快楽の渦は、純粋に快感として受け止めている。

何というか、気持ち良く思わなきゃ損だから、とでも言っておこうか。

さて、本日の主賓のお出ましだ。

「やっほ、エロエロ大神、元気にしてた?」

「ああ、そちらも元気そうで何よりだ」

「じゃあ、今日はこの辺で…」

「まあ、待て。せっかくだから、その身体、よく味わわせてくれ」

「せっかくだからお話、じゃなくて?」

「今更何を話す? 姿の見当たらぬ娘の事か?」

「どうせ、あなたは何も教えてはくれないんでしょ?」

「ああ、お前に教えてもどうしようも無い事だからな」

「どうせ、そんなとこでしょ」

「それはそうと、やはり、恋する女体は美しいな」

「な!? 恋!? 私が!?」

「ああ、お前の身体は恋をしている。

 恋は、身体を確実に変化させる。

 全身の血管は拡張し、肌は薄紅の花弁を想像させる色になり、

 汗に微量の香気が混じり、男を惑わす。

 生殖器は意識せずとも常に細動を繰り返すようになり、色や肉の厚みが増していく。

 そして、全ての物事を前向きに捉えられる様になり、その多くが性的な快感へと変換される。

 最近、私が与える快楽を、お前は純粋に快感として捉えられる様になったのではないか?」

「…あんたに図星なこと言われると腹立つ… ああ、そうかもね、私恋してるかも。

 もしかしたら、私、そいつのものになっちゃうかもね、あんたそっちのけで、そいつと…」

「それは素晴らしい!」

さすがに私はずっこけた。

「ちょっと! そういうことになったら、つまり… えーと…

 私は、処女じゃなくなっちゃうんだよ? そうなったら…」

「私が、巫女に処女性を求めていると?」

「そうなんでしょ?」

「確かに、神の中には、そういう輩も多いな。だが、私は構い無いぞ。

 むしろ、肉欲に溺れる女体もまた、至高であり、お前がそうなるのなら、

 それは是非とも味わってみたい。

 以前の様な幼い身体にも魅力があるが、

 女としての肉体に変化していくことで生まれる魅力もある。

 赤子から、老婆に至るまで、どれだけ味わっても味わい尽くせぬ、それが女体!」

「えーっと…つまり、お婆さんになるまであんたと付き合えと…」

「その通り!」

「…あー、まったく…わかったわかった…

 まったく、年の初めからとんでもない約束されちゃったな…」

そして、快楽の渦を再び抜け、目覚めると…

「これも含めて魅力とか言ってんじゃないだろうな…」

「はい? 何でしょう?」

補助の巫女さんが不思議そうに私の顔を見ている。

「あ、何でもないよ! あいつのセクハラトークにちょっとカチンときただけ」

「何だかんだ言って、神様の事好きですよね?」

「ちょっと待って… それはないな… 私が好きなのは…」

「好きな人いるんですか!?」

「あ! いない、いない、そんな奴いない!」

「あやしーなー」

「いない!」

こんなやりとりで年が始まった。

激動の年が  

 

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