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頂-ただひとり-の編-あみ- 第13話 1
 

文景さんが、ビルの玄関に近づくと、ドアから一人の男性が出てきた。

全身黒ずくめ、ボザボサで、中途半端に染まった金色の髪、無精ひげ、

顔自体は悪くなさそうだけど、正直、印象が良くない。

下手をすればヤクザか何かに見える。

まあ、この組織がどういう体制かわからないので、

もしかしたら、ヤクザまがいなものなのかな?とも思うのだが。

決して友好的な相手に見えないその男性と、文景さんが親しげに話している。

そして、金髪の男性が、こちらを見て、にこやかに笑った。

「なんじゃ、あのウザいチンピラは?」マオさん、適格過ぎです。

そして、そいつは、あろうことか、にこやかに笑いながらこちらに駆け寄ってくるではないか!

「逃げよう!」そこにいる女子の意見が見事に一致した。

「おーい!って…あれ?」

そいつは、がっくりと地面に突っ伏し、文景さんとクァ助から慰められていた。

「改めて、木ノ下です」ちょっとすねた顔で、そいつは自己紹介をした。

「なあ、文景よう…」

「何だ?」

「お前、何、モテまくってんだよ!?」

「うるせえ、モテてるわけじゃねえよ、たまたま目的が一致しただけだ!」

「しかも、人間の女に飽き足らず、妖怪にまで手を出したか!

しかもかわいいじゃねえか!」

「だから、違うっての!」

「マオさん、かわいいだってよ」とちょっとからかってみると、

「おれがかわいいのは当たり前じゃろう?」

…まあ、そういうところもかわいいと言えばかわいいという事にしときますか…

「今はそんな馬鹿話してる場合じゃねえんだ、本部は何企んでやがる?

『お代理様』の考えか?」

「いや、それは違う。代表代理は、今、用があって不在なんだ。

あの人のことを認めてない奴は多いからな、今この時を見計らって行動を起こそうって奴はいるんじゃないか、

とは思っていたが、まさか、誘拐まがいのことをやるたあね…」

「誘拐『まがい』じゃない!誘拐そのものだよ!」

能岡さんが強い口調で言う。正にその通りだと思う。

「こいつは失礼…とにかくいいとこに来たよ、本部の武闘派連中も代表代理についってって行っちまったから

どうしようも無かったんだ…連絡入れようとは思ってたんだが、奴らの監視が厳しくてな…

ちなみに、お前らの入島も把握してるぜ、奴ら」

「妨害を食らってないのは何故だ?」

「下手に追い返せば、各地支部に知られるし、代表代理に知られるタイミングも早まるってもんだ。

本部内部におびき寄せて、中で叩くっていう腹だろうよ」

「いいのか?俺なんかと話してて」

「俺が代表代理派なのは周知の事実だし、行動を起こしたのは、反代理派のごく一部、過激な連中だけだ」

「奴らの目的は?」

「それこそ知るか。奴らは、研究施設を占拠している。さらわれた子達がそこで何をされているのかは知らんが、

助けるなら早い方がいいかもしれんぞ」

「武装は?」

「対屍鬼用の火器類だ」

「確認しとくが、奴らは、戦闘要員では無いんだな?」

「本部に戦闘要員なんてわずかしかいねえし、皆、代理派だ。

中でも腕っぷしの強い奴はさっき言った通り、代表代理と行動を共にしている」

「対屍鬼用の火器類を、戦闘要員でない奴が使ってるのか?」

「ああ、逆に弾がどこ行くかわかんなくて恐えよ」

「『お代理様』に連絡はとれねえのか?」

「建物内では、どういう細工をしたのか、電話も何も通じねえ、ラジオも聞けねえ、携帯電話も使えねえ」

「外では?」

「市街地の通信機器による連絡は御法度だろ?

まあ、試してはみたが、電話そのものは使えても、支部との連絡が全然取れねえ」

私はピーンときた

「この島には結界が張られている…結界の術式によっては、電波の通りを制限する事もできるし、

特定のパターンの電波だけを傍受したり、はじいたりなんてことも理論上は可能だよ」

「そんな、器用な事ができる結界には見えなかったがのう」

「ただ分厚いだけの力技の結界に見えたけど、電波制御をするためにあの厚みが必要だったんじゃないかな?」

「どっちにしても力技には変わりないのう…うまくやれば、薄くてもできそうなものじゃが…

それにしても、電波制御ならいくらでも方法があろうに」

「例えば、妨害電波を発生させるには、決して規模の小さくない設備が必要だよ。

その点、結界なら、術式を扱える人間がいればいいし、術式自体は、一般人には関知できないし、

組織の人間にもめったに知られるものじゃないと思う」

「なるほどのう、こんな貧相な結界にも使い道はあるか」

「まあ、人間でこの程度の結界を作れれば、大したものだと思うよ?」

「確かにのう」  

 

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