頂-ただひとり-の編-あみ- 第十一話 8
 

快楽の嵐が通り過ぎ、光溢れる空間へ。

あの快楽に襲われても、特に何も感じなくなったのはいつからだろう?

慣れと言ってしまえばそれまでだが、例えば、人は痛みに慣れる事ができる。

だが、慣れた言っても、それは、あくまで、痛みに耐えられる様になったということであり、

決して、痛みそのものが平気になったわけではない。

ならば、この快楽への耐性は何だ?

何かを得たが故なのか、それとも、何かを失ったからなのか…

考える度に恐ろしいことが起きているのでは、と思ってしまう。

「やあ、来たね、待っていたよ」

「…真名ちゃんや、行方不明になった人達は、どこにいるの?」

「いきなりだねえ… そんなに焦らなくても、私と語らう時間は…」

「あなたとの語らいは短めに済ませたいので」

「おお、すばらしい、君の辛らつな言葉は至高の宝だ。

何かにつけ、人間どもは、我々を崇め奉るが、

所詮あんな動物に持ち上げられようと嬉しくもなんともない。

だがどうだ、君は私を蔑み、罵り、辱める!

その声で! その肉体で!

この世界の君の肉体が、あくまで仮想的なものであるとはいえ、

その小さく脆い肉体から放たれる言葉の何と逞しいことか!」

「…」

私は神様を冷たい目で睨みつけた。 「おおぅ! 何と美しい目だ! 神族たる私がこんなにも感動するとは…

動物はこんなにも美しい物を生みだす…!

だが、君は特に…

その言葉、その眼差し、その容姿、その涙、その汗、その体臭、その分泌物、その老廃物、その糞尿…!

これこそ、物質界において最も尊ばれるべき宝物であり、最も崇められるべき偶像である!」

自分の排泄物が神社に御神体として祀られる場面を想像してゲンナリした。

「もう、あんたの変態トークは聞き飽きてるんだけど、今日のは特にひどいね」

「おお… その言葉でもっと…」

「…そろそろいい加減にしてよ?」

「ふふっ…何を言う? 私に答えを求めずとも、君はその力を手にしているだろう?」

「! 三種の力…?」

「物質界においては、その力を使いこなせれば、大抵の事はカタがつくはずだ」

「ふーん、いい事聞いた。もうあんたに会う必要も無いってこと?」

「それは困るから、定期的に私と会わねば、力が衰える様になっている」

「ありがとうございます、この腐れド変態」

「おお… 最高だ… では、また会おう」

そして、いつもの様に、再び激しい快楽の嵐が通り過ぎる。

目が覚めると、またいつもの顔だ。

「お疲れ様。今日も少なめでしたよ」

ここんところ、目覚めた後に点在する自分の排泄物の量が少なくなっている。

改めてその事を指摘されるのも恥ずかしいが…

とにかく、私には、真名ちゃん達を見つけるための力が既に備わっている。

真名ちゃん…待っててね…!

私が助けに行くよ…!  

 

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