頂-ただひとり-の編-あみ- 第十話 2
 

御波さんは、小柄だが、かわいいし、色素が薄くてただでさえ目立つのに、更に目立たせる特徴がひとつあった。

彼女の両手には包帯が巻かれている。

皆は、それに注目しているが、それが何を意味するのか聞こうとする者はいない。

まあ、とにかく、このクラスには当分慣れるのは難しいだろうから、と、私と能岡さんで、彼女の席に近づいた。

「御波さん、初めまして、宮田編です」

「私は能岡観里。よろしくね」

「は、はい…よろしくです。私は、御波…あ、知ってますよね…でも、改めまして、御波真名です。

子音がMとNだけってからかわれてました…変な名前ですよね、でも気に入ってるんです…

よろしければ、MNとでもお呼びください」

「えっと…真名ちゃん、でいいよね…?」

「そんな普通な呼び方でいいんですか?」

「でも、可愛い名前だし、気に入ってるんでしょ?」

「はい…私の真の名前ですから…あ、真の名前って書いて真名です。あ、黒板に書いたままだった…」

何と言うか、変なペースで話す子だが、悪い子ではないみたい。ちょっと卑屈なとこもある気がするけど…

包帯のことを聞くのは悪いと思ったので、心を読もうとした(これも悪いと言えば悪いんだけど…)

その瞬間、この子の手から火が出て身体に至るまで燃え広がるイメージが見えた。

「!!」

「編ちゃん? どうしたの?」

「え、あ…な、何でもないよ…あはは…」

「あ、これですか」と、御波さん…いや、真名ちゃんは、おもむろに手を差し出す。

「これは、火傷なんです。以前、ちょっと事故に巻き込まれまして、日常生活に支障は無いんですが、

皮がちょっとつっぱるので、たまに鉛筆とか箸とか落としちゃうんですよ、

あ、ロンドンにも行ったことあるんですよ、って、笑う所ですよ、箸が転げても笑うって言うでしょ?」

この子の笑いのセンスはどこの国のものなんだ…?少なくとも、イギリスや日本ではないことは確かだ…

それにしても、さっきのイメージは一体…この子の心も安易に読んではいけないな…

もしかしたら、この子にも何らかの能力があるのかもしれないが、

今まで日本にいなかったのなら、前田と会ったことは無いだろうし…前田に渡航経験が無ければだが…  

 

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